昭和の風林史(昭和四六年八月十七日掲載分)

突っ込み売るな 戻りを狙うのだ

突っ込みや崩れは売るな。そういうのは利食いする。反発したり戻ったところを売るのがよい。

「つくつく法師いつでもどこでも遠き声 種茅」

相場の定跡(石)の本なら〝崩れ〟型で、ここから売っていくところと書いてあるだろう。ところが昨今の相場は定跡の本のようにはいかない。

先二本、一万四千七百円あたりは止まるだろうと巧者筋は見ている。
買い方主力も、一万四千七、八百円は絶好の買い場になると見ている。

前二本(八、九月限)、これは相場ではない。強弱の対象にもならない。

それで新穀限月だが、これからどういう方針でいくべきか。売ってよしの相場だし、買ってよしの相場のようにも思える。
戻ったところを売るのも判りやすいし、突っ込んだところを買うのもよい。

市場には、常にカンカンの強気と、カンカンの弱気とが存在する。それはその人の性格からくるものであるから、他人がとやかく言う筋合いではない。

さて、すべての材料は、およそ市場で言い尽くされている。その限りでは言うことなしである。

下げるもよし。戻すもよし。どちらでもよい。それは目先である。
大勢は一万四千円割れのコースであろう。

もちろんこれからの天候と作柄にもよろうが、相場そのものは〝買い疲れ病〟で①買い方が意識的に人為的買い煽りをすれば、よけい後が悪くなる。無理したとがめは大きい②さりとて買い方がジリジリ敗勢をたどり、それを防戦つとめれば、兵力の逐次投入で戦術上、最も下策とされる。

現在、五千五百円から六千円台にかけて、買い方の買い玉が、うめいている。すべては引かされ、これからの百円安、二百円安は追証々々でさいなまれる。

作柄のほうは、かなり直っているという空気が市場を支配している。20日発表の作付け面積は、早耳情報として五万一千五百ヘクタール前後だろうという。
東北六県の内地小豆も直っている。十月には相当量が渡ってくる。

よし、戻したところは売ってやれ。

ただし、突っ込んだところを売ってはいけませんよ。
買い方には力がない。

自由化を控えて、予備軍も必要だ。自由化発表で安いところを、もう一発買うための予備軍だ。

一日過ぎれば一日それだけ新穀の出回りが近くなる。時は金なりとはこの事であろう。年内収穫の三割ないし四割の出回り。それをも買い支えるだけの力が、あるだろうか。

年間の需給といったところで、来年は来年のこと。年三回収穫できる台湾小豆も入荷する。

戻りを売っておけばよいのである。

戻りがあるか。戻り待ちに戻りなしとも言う。少しぐらいの反発はあるだろう。それを売る。

●編集部注

上り坂、下り坂、魔坂と、相場にはいくつもの坂が存在する。

一九七一年(昭和四六年)現地時間八月十五日の日曜日、ニクソン米大統領は金と米ドルとの交換停止を発表。所謂「ニクソンショック」である。

十六日の日経平均株価の寄りは二七四五円。引けは二五三〇円。翌週、二三日の安値は二一三三円。一週間で22%下落。

半年かけた上げ幅が、この一週間で全て消える。

【昭和四六年八月十六日小豆一月限大阪七〇円安/東京三〇円安】