昭和の風林史(昭和四六年八月十六日掲載分)

存亡の危機へ 当面戻り売り!!

買い方まさに危急存亡。大勢はおよそ決せり。当面突っ込みは利食い。戻りは積極売りでよい。

「むらさきの流星垂れて消えにけり 念腹」

さて、崩れてきた。三市場とも先限は千円棒を記入した。しかも大引値段で〝どうだい〟文句ないだろうという千円棒だ。

買い陣営は寂として声なし。

作況の回復/雑豆の自由化/天候の回復/買い疲れの相場/日柄経過/中共小豆の入荷と先行き新契約の可能性―。

そして作付け面積の増大という伏兵もある。

ケイ線的には先限が二百四十円を切ったらガタガタになると書いた。まさにその通りである。

取引員の懐ろは全般にベタに売られていた。こんなにお客が売っては、下がるまいとクロウト地場筋が楽観していた。

天は大衆に味方した。

さて、この相場どう見るか。

週末は=買い方・戦況を見守る(投げていない)。

売り方マバラ筋は利食いしていた。

週明けは利食い戻しがあるだろう。また買い方も、まなじりキリキリと決戦を挑んでくるかもしれない。

だが買い方の戦線はあまりにも広がりすぎている。期近二本に兵力を再投入しなければならぬ。十月限にも主力師団を充当しなければ東北六県内地小豆が五、七万俵出回ってくる。西部戦線にも異常あり。新穀先二本が崩れては旧穀も浮き足立つ。先二本の支援に海兵師団と航空師団の投入が急がれる。

買い方存亡の危機。

相場は、すでに組織的攻勢の機能を持たない買い方の散発的な、そして時に特攻的反撃はあろうが、大勢は、およそ決定的である。

反発したところは、充分なゆとりを持った〝戻り売り〟の売り方〝空挺師団〟の戦術投入が行なわれるだろう。

先三本、一万五千円マジノラインの蹂躙は時間の問題である。

買い方最も弱い部分は名古屋大石城である。

今週は、あるいは買い方自ら相場を崩しにかかる投げ相場が見られよう。

突っ込みは利食い。戻りは売り方針がよい。

●編集部注
いつもより、記述が簡潔。文量も若干短い。

〝利食いは器量〟とよく言われるが、利食いにせよ、損切りにせよ、どの相場も、参入よりは、退出する方が難しい。

「週明けは利食い戻しがあるだろう。また買い方も、まなじりキリキリと決戦を挑んでくるかもしれない」と、冷静に場の流れを分析した上で、「買い方自ら相場を崩しにかかる投げ相場」の可能性も視野に置いて「突っ込みは利食い。戻りは売り方針がよい」という結論に至るこのロジック。

諧謔表現も含めて、芸として完成されている。

【昭和四六年八月十四日小豆一月限大阪四一〇円安/東京三六〇円安】