昭和の風林史(昭和四六年十一月二十日掲載分)

底入れ確認!! 反落場面を買え

ようやく小豆に大底が入って、これから押し目買いだ。反落したところを買えばよい。

「枯菊を焚くなり淡き火を期して 瓜人」

山梨商事の霜村氏のところで壁に貼っているケイ線を見ていたら増山さんがはいってきた。相変わらず元気で張り切っている。

『ひどいよ、買い方地獄で握手しろ!!は。自殺への契約書ときてはもう頭にきてしまう。私が分投げんと底ははいりませんか』―と厳しい。

霜村氏は乾繭で、生糸で目下苦戦中だが、顔には出さない。

増山氏も口では小豆の高値掴みで、うんうん言っているのだ―というけれどそれほど苦しい顔つきでもない。勝負師が相場記者に顔色を読まれるようなことはしない。

霜村氏は小豆(東京)の先限一万五千円。先日のあの安値を九文切って一万四千九百十円は底入れ―と判断した。

太平洋の山本専務も一万四千九百円はシッピン。クッピン。米相場時代からこういう値段は大相場で止まる値になると言う。

丸文(太平洋)の大手顧客であるKGは手亡でかなり、小豆での儲けをぶっ飛ばして現在アメリカ旅行中。帰国したらまた活発に動き出すだろう。

山大の元帥は不在であったが強気であることは間違いない。

ここにきて中山製鋼株で頭に血がのぼっている近藤紡が東京岡地で小豆を売ってきた。先日は、安値を買ってチャリンコの如く素早い利食いをした近藤紡だが今度は売り上がるのかもしれない。岡地の中道社長は福富常務をつれて西独で二軒目のボーリング場のオープンで不在だが映画カサブランカに出てくるハンフリーボガートみたいな、レインコートの襟を立てて夜霧の中に消えていく姿がよく似合う岸上昌常務が、虚無的な顔で近藤紡が売ろうが買おうが、どうでもよいという情熱の冷めた様子であった。

さて、相場はどうだろうか。

取り組みが、少しずつ増大してきているのが楽しみである。

ストップ高っでエイエイヤーと買い方気勢をあげたがあまり急激に高くなると、もう一度反落する。しかし先日の安値で底がはいった。

大きな下げ相場の最終段階は、泥靴で踏まれるように、さんざん叩かれるもので、叩いても下がらなくなったら本当の底値になる。相場はようやく押し目買いになった。

●編集部注

今回の記事は〝地獄に堕ちた勇者ども〟たちの素顔が満載になっている。

コール〝安堵〟レスポンスではない人もいたという事がサラリと入るが、買い方も、売り方も茶目っ気を感じるのは筆の力。

「強くなければ生きていけない。やさしくなければ生きていく資格がない」を、まさに地で行く世界。

【昭和四六年十一月十九日小豆四月限大阪三五〇円高/東京三五〇円高】

*地獄に堕ちた勇者ども・・・1969年のイタリア映画。ルキノ・ヴィスコンティ監督作品

*カサブランカ・・・1942年のアメリカ映画。マイケル・カーチス監督作品。出演:ハンフリー・ボガード、イングリッドバーグマン。