昭和の風林史(昭和四六年十一月十一日掲載分)

突き上げ歴然 出回り遅れ深刻

出回り遅れがいわれ現物面からの突き上げが見られるのはこれからだ。押し目買い基調不変。

「青空のみえてはかなき時雨かな 万太郎」

新穀の出回り遅れが目立つ。需要期を控えて現物筋はノドから手が出るほど欲しがっているが、十一月積みなど全然売り物がない有様という。

ビート、ばれいしょなどに手をとられて調整作業が遅れている事情もあろうが一番の原因は高値覚えによる農家の売り渋りであろう。

中国産の年内入船が困難視されているおりである。そこへ道産の出回りは十勝物が皆無で、中間物がボツボツという商いである。およそ一カ月の遅れという。

定期市場では中国小豆の大量成約にわき、韓国小豆、台湾小豆とあたかも渦をまいて市場に出回るかのような印象を人々に与えたが、実情は違った。

そのはずだ。先の安値時においてさえ、農家の手取りが一万六千六、七百円であった。輸送費その他経費を上積みすれば定期で一万七千三、四百円になる。

これで産地からの買戻し活発化―ということになれば、現物面からの突き上げは必至というものだろう。

高いのは現物吊り上げ工作―によるとは限らない。大阪・阪急での新穀小豆の売り出し価格は五百グラムで二百四十五円(俵換算二万九千四百円)、昨年時に比べて実に六割強の値上がりとなっている。

凶作を反映したものであろうし、諸物価の値上がりもあろう。

品質の方は言われるように前年と比べても色薄が歴然としている。

定期市場の弱人気とは別に、実際の小売物価がすでに目をむくほど高くなっている事実は見落とせない。

ところで相場であるが、方針は大底確認しての押し目買い基調―と判断される。
確かに短時間における千五百円以上のもの急騰は一つの〝フシ〟と見られぬこともない。だが、ここで〝初戻りは売るべし〟―で人気が弱いほどに次の飛躍を約束するものだ。

ことに年内限月は強調でこの逆ザヤはさらに開く可能性もある。

●編集部注
 偶然なのだが、最近、上記の時代の映画や、その映画を製作していた会社に関する書籍を目にする機会が多い。。

 松竹、東宝、東映、日活、大映の5社が、この当時の大手であった。

 昭和四六年十一月に、日活は通常の作品からポルノ映画の製作に転換、生き残りを図る。

 同月末、大映では全従業員が解雇され業務停止。翌月に倒産する。

 日本の映画産業の栄枯盛衰と、隣の小豆のチャートとが重なって見える。

 「猛き人もついには滅びぬ ひとへに風の前の塵に同じ」(平家物語)

【昭和四六年十一月十日小豆四月限大阪一五〇円安/東京二三〇円安】