昭和の風林史(昭和四六年十二月二十一日掲載分)

すべては春に 年内は閑な場面

本年を顧みれば激しい消耗の戦いだった。年内相場は閑になり、下値も深くないが上にも行けん。

「草枯るゝしづけさ聞けり河原ゆき 悌二郎」

静かに年は暮れて行くといいたいが、世相騒然とした年の暮れである。経済界のほうは予想以上の円切り上げ幅で暗然としたおももち。週明けは株式市場のほうには大きく響かなかったが、商品相場はショック安をまぬがれなかった。

小豆相場は当限納会(22日)接近で期近限月が重い。結構品物が多いことと、受けても妙味がない。そして買い方も無理はするまいという空気だった。
当限納会の悪さが、早い目に相場の上に出ていると見るべきであろう。

これでまた市場は閑になりそうだ。大納会が来週火曜の28日。残り日数は少ない。
売っている人はこれからの下値を利食いしてくる。だから、それほど大きな下値はないだろう。

いうなら時間切れである。買い方も、ここからどうするという方法もない。まさかぶん投げてくるというようなこともあるまい。心理的には暗い越年であるが、資金的には行き詰まっていないし、それに年が明ければ楽しみがある。建て玉の規制緩和。大底構成の線型。証拠金も、気は心で少しばかり下がるわけだし。

まあ、ふり返れば買い方は、初めよくて後悪し。売り方は前半悪くて後よろし。買い方の敗因をさぐれば勝負に情をからませたこと。売り方の勝因はベトコンなみのねばり強さであろうか。

相場としては一万四千五百円(大阪)以下は、あり得ない値段といえそうだ。年内は五千円中心の逆張りであろう。

幕切れとしては17日の農林省発表→18日の買い切れなかった相場。これが一ツのセンテンスであった。

相場が疲れているという感じである。

それはそうだろう。八月16日から十月7日まで、およそ七千円高をして、そのあとストレートに七千円安をしている。これだけ動けば市場も荒れるし、相場も疲れる。

本年一年の小豆市場を通算して、損得なしのベタベタで、もともと、という人があれば成功としなければなるまい。強気にしろ弱気にしろ、チャブつき組にしろ。バランスシートは幾らかでもプラスだという人は大成功である。思えば激しい消耗の戦いであった。
●編集部注
 基本的に、相場は休めないようになっている。

 機関投資家は言わずもがな、一般投資家も勝とうが負けようが心の中は「もっと」と「まだ」に悩まされ「もう」がない。

 そして「休むも相場」の大切さを噛み締める。

【昭和四六年十二月二十日小豆五月限大阪五〇〇円安/東京五七〇円安】