昭和の風林史(昭和四六年十二月十八日掲載分)

買い方針堅持 強弱は無用なり

この原稿を書いている時点では、まだ数字が判らない。しかし相場は安くても買いであると思う。

「河豚の座やふたたび立てば海暗き 橙黄子」

17日は一時から全国穀取市場管理委員長会議を行ない先三本の規制緩和を検討する。業界の空気としては輸入小豆の大量成約で供給不安も解消したことから、建て玉枚数の規制は緩和して欲しいという要望が強い。

市場管理委員長会議でも四、五、六月限は一人なん枚までとか、一限月一店なん枚までという制限をほどいてオープンにするよう意見が一致するだろう。

この日は注目の農林省の収穫数字の発表で、恐らく引けてからになるだろうが前場三節ちょっとした押し目が入って、すわ早耳情報による売りか?と色をなしたが閑散な市場で、叩き屋が模索している市場人気に便乗して叩いた格好。

大阪市場は、いわゆる阿波座筋の叩き屋が鳥なき里の蝙蝠で、調子に乗っている。強気にすれば、なんとも腹立たしい存在であるが、相場に腹をたててみても仕様がない。

相場としては、底値圏にあると信じる。

仮りに発表数字が七十五万俵以上であっても、そのショックで崩れたところは買い場になると思う。

山大の杉山社長は、信念の強気を保持している。買っているから強気を言うのではない。強気だから買っているのだ。

彼は元帥と呼ばれ、千軍万馬の信じられる相場師である。「なあに見ていてごらんなさい。この相場は必ず今のような安い水準にじっとしていませんよ」―。

山梨商事の電光足の先生(霜村昭吾氏)は、全市場とも線(百円電光足)にツンバリが出た。相場は必至の買いである―と意気さかん。

見ていると取り組みも太りだした。そして弱気がふえ、かなり売り込んでいる。

ここで一発S高を演ずれば、軟派陣は木っ端微塵であろう。

目のさめるような急上昇もよし、あるいは押し込んで安値を固めるもよし、一万四千五百円は相場の大きなフシである。

高値から三割下げ。時間をかけて買っておけば必ずものを言う相場だ。

輸入材料に対しても今の値段は抵抗力が出来ている。北海道小豆の年内積み出しは、たったの27万俵。昨年のそれが51万俵であったことを見ても相場は買い場にあると言えよう。

●編集部注

今の感覚が早すぎるのか、それともこの当時が遅すぎるのか。情報の伝播と相場変動の関係がゆるいと感じてしまう。

【昭和四六年十二月十七日小豆五月限大阪二一〇円安/東京二〇〇円安】