昭和の風林史(昭和四六年十二月十日掲載分)

先限好買い場 鎬をけずる当限

納会にかけて当限は必死の攻防戦が展開される。先限の一万五千円に近い値は文句なしの買い場。

例月に比べて当限納会が早い。これから二十二日の納会まで、それこそあっという間であろう。鎬(しのぎ)をけずるかのような凄惨な争いはすでに始まっている。

売り方、買い方とも〝俵読み〟に連日余念がない。

弱気が一気かせいに〝師走の城〟を攻め落とそうとするなら、強気陣も一歩も引く気配はない。

当限の敗退は年明け後の相場に測り知れない影響をもたらすことを百も承知であり、運命を賭して事に臨まねばならない。

輸入小豆を積載した船は相次いで神戸、横浜に入港そして入港の予定である。

買い方陣にとっては大々的な踏みをとりにくい、まこと楽しみのない師走の戦いといえ、手を引くわけにはいくまい。

いや、楽しみは皆無とはいえまい。十七日の農林省収穫発表がそれである。

六十万俵台のものなら、戦況ががらりと一変することは衆目の一致するところ。

見るものをして固唾をのませる「当限戦」はさておいて、中、先限はどうだろうか。

どういうものか、相も変わらず売り慕いの人気である。よほど輸入不安が絶えず頭の中をかけめぐっているとみえる。

先限を一万七千円も八千円もしていると期近と同列におくという意識ではこの売り慕いも当然の結果かもしれぬ。

お隣りの中国では、北京放送が「ことしの農業生産は連続十年目の豊作を勝ちとった」と報じている。

が、豊作はお隣りの国の話で、わが北海道の冷害は厳然たる事実である。
豊作の国から大いに不足する国へ、荷が移動すればすべてがまるくおさまる。

だがそれも、先にいっての北京商談、あるいは春の交易会で商談が進んだ場合のことで、今のところ、相場の居所そのほかに影響される仮定の話である。

仮定の話に尾ヒレがついて、あたかも輸入ラッシュで国内の需給が崩壊するかのような弱人気である。

これも相場(弱地合い)が言わせるのであろう。

物(もの)の値打ち価値が判る人は、おそらく黙って一万五千円近い安値は拾っていよう。

●編集部注
順ザヤ、逆ザヤ、天狗ザヤ、おかめザヤ―。

鞘にもいろいろあるけれど、それもこれも商いがあっての話である。

商いのある市場では、かの如くロジカルな知的ゲームの世界が現れる。

一方でこの世界をテクニカルでみる人もいるわけで、これはシンメトリカルトライアングルだ。
【昭和四十六年十二月九日小豆五月限大阪九〇円高/東京一〇〇円高】