昭和の風林史(昭和四六年十月二十七日掲載分)

受けても悪い 小豆は買い辛抱

小豆の買い方は辛抱するところ。手亡は結局はぶん投げ相場になろう。小豆買いの手亡売りだ。

「なに事も胸にをさめて秋の暮 万太郎」

上げる時もきつかったが下げもまたきつい。東京市場の当限買い方M・M氏は相手が近藤紡だけなんだから今月納会は二万三千円に持っていきたい意向であった。しかし霜村昭平氏が、今は規制を緩和してもらうのがなによりの願望で、今のような状態では取引員も取引所も薄商いで悲鳴をあげてしまう。当限納会を今二万三千円に持って行くことはたやすいことだが、業界の機運も規制をゆるめようとしている時だけに、そういうことはしないほうがよい―という意見でM・M氏も不満ながら従うことになった。

ここで目につくのは手亡相場の悪さで、今月(きょう)当限を買い方が受けても、結局受けた品物を十一月限にぶつけてくるだろうし、受けなければ受けないで一段安である。

買い方にすれば小豆戦線で苦戦中だけに、あるいは手亡戦線から軍を退くことも考えられ、全面撤退となれば七千円割れ場面もあろう。

むしろ、作戦からいえば、手亡をぶん投げて小豆に戦力を結集すべきところである。

筆者は、この手亡は十一月限の納会時分までは戻りらしい戻りもなく、ジリ貧が続くと見る。

小豆のほうは一万七千五百円どころは叩きすぎの感じがする。

十勝農協26日の買い入れ価格は〔毎日テレホン〇一五六六六・二三二六→九番で発表〕小豆一等一万八千五百円。二等一万七千八百円。三等一万七千円。四等一万五千五百円。五等一万四千円(手亡七千円)である。

農協買い入れ価格二等一万七千八百円ということは農家素俵でこれが定期では千円プラスして三等一万八千八百円のものである。

市場の一部では中間地帯は二・二俵収穫を言うが、出回り状況を見ていると、一概にそれを信じるわけにもいくまい。

中共小豆にしても香港ルートでは二〇三~二〇五ポンドである。交易会での契約書から計算して、定期市場は売りヘッジ以上に売られた数字が出てくる。

売り方は値を一気に叩き落そうとするけれど、これが事志と違って逆の現象に転化するように思える。小豆は強気持続。

●編集部注
曲がり相場における忍耐は、相場における永遠のテーマといえる。

風林火山忍耐モード。動かざる事、山の如し。振り返れば、十月頭の高値を頂に置く山がある。

上の文章を書く当時の風林火山と、2面の「あたり屋につけ、曲がり屋に向かえ」で週の陰陽を予想する人物とは、そんなに歳が離れていない。むしろ、昭和四十年代のこちらの方が、若輩の身であったりする。

この人物は、よくこんな言葉を口にする「オレ、堪え性があれへんねん」。 

7月に行われたセミナーで、実践的な相場心理の話をした際、「損切り千本ノック」で〝損切り力〟を磨く話をした。

ディスプレイに、十数名柄のチャートを並べて相場を予測。ダメと判断したら、片っ端から損切りしていく。これが存外難しいのだという。

利食いは器量とよく言うが、損切りもまた器量なのかもしれない。

【昭和四六年十月二六日手亡十二月限大阪七三六〇円・二七〇円安/東京七三五〇円・三〇〇円安】