昭和の風林史(昭和四六年十月二十二日掲載分)

わが買い値は 遥か雲の彼方なり

手亡は時間をかけて値段が消えていく相場だ。大勢売り一貫。小豆はびっくりする安値は買い場。

「新豆腐白味噌汁のうまさかな 聴骨」

21・22・23日と全商連が総力をあげて〔全国商品取引員経営者セミナー〕を神奈川県は葉山のソニーシーサイドクラブで開く。

筆者は取材すべくこの原稿ともう一、二本を書き置きしておいて21日の朝七時二十五分の新幹線で現地に向かう。
全協連会長・山本博康先生と一緒である。会長もセミナーに出席する。『朝はなにもたべずに来たまえ。新幹線のビュッフェで朝食を共にしよう。なんでしたらウォーター割りのウィスキーでもやりましょう。一時間半開講でしょう』。

21日は夕方五時までぶっ通しで、夕食後七時から九時まで皆さん缶詰めで、出席者のほとんどが取引員会社の社長であるため、これは大変な勉強である。

二日目は朝九時半から夕方五時半まで、ぶっ続けである。

『会長、会場はソニーの社員研修所らしいですね。会長はウィスキーのポケットびんでも、買っておかないと、間(ま)もてなくて困ることになりかねませんか』。

『そうだそうだ。夕食時にもアルコール類はいっさい出さないと聞いている。君は取材のための出席だからよいですが、多分きゅうくつだろうね、出席の方々は』。

だから相場のほう見ておれない。

しかし、現在の相場の大勢的な判断をどのようにしているかは書ける。
手亡については、これはジリ貧相場である。戻しもしようが、所詮(しょせん)は一時的な戻りにすぎず、底入れとか、立ち直りにはならない。

高値に因果玉がびっしりぶらさがっていて、幾分投げたけれど情勢は好転していない。結局日数をかけて七千円そこそこのものであろう。

小豆は交易会次第で、目先的には売られるところもあろうが、なにせ相手は商売上手の中国である。百社にのぼる小豆海業者が雲集して、中国方はびっくりしているそうだが、一万㌧や二万㌧出来たところで百万俵不足の今年度の小豆の需要が、ひっくり返るわけでなし、下げるだけ下げれば急反騰も充分あり得る。

平均買い値が非常に高い買い方は、どこかで安値を積極買いしてこよう。

●編集部注
 まだ、この時点で中国はいまの中国でない。

 この翌週の国連決議で、国連常任理事国の席は、中華民国(台湾)から、中華人民共和国へと移る。

 その翌年、日本は日中共同声明に調印。中華民国とは断交状態となった。教科書に出てくる「日中国交正常化」である。

 少年時代を台湾で過ごした風林火山の心中や、如何許りかと思いやる。

【昭和四六年十月二一日小豆三月限大阪七〇〇円安/東京五三〇円安】