昭和の風林史(昭和四六年十月二十六日掲載分)

強弱問答無用 男は黙って買う

カリカリしないでもこの小豆相場は反騰出来る。八千円ラインのモミは長いほどよろしい。

「つぐみ罠畑の巌にも餌をすこし 蛇笏」

高値から小豆相場は四千円幅を下げた。

だからこの相場は買いである。

とりあえず三分の一戻し千三百三十円高地点は一万八千九百円。そして半値戻し(二千円高)の一万九千六百円あたり、充分に考えられる地点となった。

弱気が確かにふえているし、強気筋にしても心の動揺は隠せない。

中共小豆の売り値が予想外に低かったことや、契約の量が出足からドッと出来たこと。そして、このあともかなり契約出来そうなことなど、戻り売り人気を強めている。

だが相場は中共ショックをすでに織り込んでいると見る。

線型としては、かなりキツイ反騰が充分可能な姿になった。

これから先に出現するであろう材料は予測することが出来ない。

―が、線は、大反騰を暗示している。それが、なにを根拠にそうなるのかは、判らない。だが、この相場は売ったら、ひどい目に逢うだろう。

高値圏には、かなりの買い玉がぶらさがっている。追い証もかかった。証拠金が大きいだけに、少々下げてもねばりは利くが、それでも追い証が攻めた。

大台四ツ変わりの四千円下げ。

だから千三百円(三分の一)や二千円(半値)戻しが可能なわけである。

売り方は、さらに叩き落とそうとする。だが、それは無理だ。目に見えない値ごろの抵抗がある。

相場というもの、ひと晩寝たら、ガラリと地合いが変化するもので、なあにひと場で五、七百円も反騰すれば相場を見る目も一変する。

八千円ラインでジグザグもむのも一ツの型であり相場である。ここでもむほどに足場は頑強なものとなる。筆者はこの小豆相場を本気で強気してみようと思う。嬶はまだ質流れしていない。

手亡はどうかというと、時間をかけてのジリ貧である。売りっぱなしで忘れることだ。

気がついたころは七千三百円以下であろう。

今のもみ合いを放れたらスッーと黒い糸を垂らして音もなく安いはずだ。

●編集部註
 「男は黙って」というフレーズに時代を感じる。

 この記事の前年、あるビール会社が広告に三船敏郎を起用。このフレーズは、その時のキャッチコピーから来ている。

 女房を質に入れても何とやら。それがどうした文句があるか。初代桂春団治の香りがうっすらと、この記事から漂う。

【昭和四六年十月25日小豆三月限大阪一万七八六〇円・二七〇円安/東京一万七八〇〇円・二六〇円安】