昭和の風林史(昭和四六年十月五日掲載分)

今が大底値段 手亡も底値圏だ

小豆も手亡も相場が〝その後の大幅減収〟を認識して、再び高騰するであろうことは疑いない。

「あけびまだ青し目白の揺りて去る 文亭」

筆者と入れ違いに山梨商事の霜村昭吾専務が土曜、日曜、月曜―と、産地の視察に回っている。月曜早朝の帯広からの電話報告では、日曜は朝九時から夕方六時までぶっ通し九時間、12カ町村二八〇㌔㍍の畠を、つぶさに調べた。青刈りした分の雨による腐敗と、想像を絶する立ち枯れによる被害の大きさに、とにかく驚いた。

1・9月24・25日に青刈りした分が青い葉のままだったため、長雨でサヤが腐敗しだした。

2・音更(おとふけ)の27カ部落では一俵以上とれる畠があれば赤飯をたいて祝わなければというほど悪く一・五俵の畠が五カ所。あとは一俵ぎりぎりか、それ以下だ。

3・新耕の畠では17ヘクタールが全滅で草ぼうぼうのところがあった。完全に小豆の木が消えていた。

4・ここの場所は〝風林〟さんは見ましたか聞いたところ〝風林〟さんはもっと出来のよいところを見て帰った―と言っていた。

5・山路のほうにもはいったが立ち枯れがひどい。でなければ青刈りのままでこの分では十月の十二、三日ごろの霜でもかなりの被害が出る。

6・手亡も青々したまま刈り入れしてあり、完熟していないから品質低下は必至だし、凍結にでもあうと大変なことになる。

7・私は一万八千円台の北海道小豆は黙って買っておけば来年は二万五千円から三万円になると思った。

8・手亡も八千五百円以下のものは底値圏で、買っておけば間違いない。

読者から、小豆は手が出ないため、手亡の相場を書いて欲しいという要望が強い。もとより手亡の相場も買い方針であるが、証拠金がどれほど高かろうと小豆の二枚、三枚の買い玉は持っておきたい。今が底値であるからだ。

市場全般の空気としては、九月一日以降の大幅な収穫減(手亡も同じ)について正面から取り組もうとしない傾向がある。相場が崩れたことにもよるが、それだけ人気が弱いのである。だが現実は冷厳だ。必ず小豆、手亡の相場が〝その後の収穫減〟を認識する時がこよう。

●編集部注
行間から、書く事への喜びが溢れている。

人間、かくあるべし。

と、表象だけを書いても仕方がない。これぞ、現在の本邦商品市場にない世界。まさに生産地相場の真骨頂といえよう。

まだこの頃には出版されていないが、投資日報はこの後に「商品先物市場」という月刊誌を出す。

穀物相場は詳細なデータ分析が相場の武器の一つ。その武器を満タンに掲載した月刊誌の片鱗がこの記事の中に伺える。

【昭和四六年十月四日小豆三月限大阪七〇〇円高/東京五三〇円高】