昭和の風林史(昭和四六年十月十五日掲載分)

現在は買い場 再び棒立ちする

九千円割れが欲しいところだが、そのような値はつきそうにない。再び小豆は買いになった。

「縄の端くるくる上る松手入 玻美」

市場の人気は再び弱くなった。新物の契約がぽつぽつ進展していることと、交易会での成約待ちで、戻りは売っていこうという空気。

しかし伝えるところでは帯広の一等地で素俵つくり三等一万九千五百円(片山商店の話)これが精一杯で、二等検など、とても出来ない。しかも三等で一車(15㌧)と纒めるのは大変な状態という。
帯広で平均反収一俵上回ることはないだろうといわれる。

十一月必着ものが果たしてどれだけの量に纒まるだろうか。大安値でのザラバ契約は、かなりほどけていたが、今ここにきて出回り遅れと予想外の鎌入れ不足で、デール取り引きのスムーズな履行が危険視され、またそれを取引所相場にヘッジした筋が現物は来ないわ、定期は高いわ―で結局踏み上げざるを得なくなろうというもの。

売り方にとっては、交易会での大量成約が頼みの綱である。
だが北海小豆三十五万俵では、仮りに一万㌧や二万㌧契約できても品物がだぶつくまでには至らない。もし交易会での契約が難航すれば定期は二万五千円に沸騰してしまい、取引所は完全に存在無用の建物になる。

おりから結婚ブームである。また出産ブームである。祝儀にはお赤飯と紅白の饅頭がつきもの。これは饅頭の値段にかかわりはない。高かろうが必要なものは必要なのだ。新幹線列車のあの一杯な新婚さんを見るにつけ、はたまた空港での新婚カップルを見るにつけ、あれは小豆の特別需要だと思う。

さて、相場が下がったから筆者の方針は再び強気に転換する。

線型も九千五百円以下は安心買いになる。出来ることなら九千円割れが欲しいところであるが、そういう相場には、なりそうもない。

それでまたストップ高の三連発だ。

市場は交易会の様子を眺めて売り崩そうという空気であるが、崩れぬ相場を崩そうとすれば逆に相場が立腹して棒立ちするものである。

●編集部注

 一般的に、この年から昭和四九年までが第二次ベビーブームであるとされている。この時の子供達が、所謂「団塊ジュニア」と呼ばれる世代だ。

 〝おりから結婚ブームである〟とあるが、これにに便乗する流れも登場。

 今も日曜日に放送している「新婚さんいらっしゃい!」も、昭和四六年一月から放送開始。

 それにしても、婚礼需要が小豆特需とは、面白いが少々苦しくないか。

【昭和四六年十月十四日小豆三月限大阪一九〇円安/東京一九〇円安】