昭和の風林史(昭和四六年十月十八日掲載分)

厳然買い方針 今週は暴騰場面

値段としては買い場にきている小豆だ。どこかで買い場の総反撃があるだろう。売る手はない。

「鵙鳴くや明治の椅子の影深し 彩二」

韓国小豆の四四〇㌦中心の契約もの(10・11月積み)をさかんに定期へつないでくるから、これで地合いが重たい。また産地からの売り物も見られ、交易会の大量成約も警戒して強気筋は積極的に手を出さない。

一方、買い方をまいらすためとも見られる手亡の実弾浴びせは、戦線を手亡にまで広げた買い方にとって、まさにヒットラーのアフリカ軍団が連合軍の反撃にあって、ロンメル元帥たじたじの態という格好でもある。

戦力は集中なり。戦力の逐次投入は下策なり、逐次消耗するが故なり―という兵略の鉄則がある。

買い方は、高値で逃げ場を失した。だから高値で玉がひろがって今は苦しい。へたしたら玉砕だ。

しかも交易会を背景に売り方は、もう千丁、いやあと二千丁売り崩せという恨み骨髄の執念のこもった攻撃である。

筆者はこの戦いは長びくと見る。

どこで買い方陣営が戦列を組み直し、いかなる戦機を掴んで、総反撃に出るかである。

相場としては週末の引け値あたりは好買い場にきていると思うし、これがもう一段安があれば、あるいは本年最後の買い場になるかもしれない。

需給事情を考えれば中共小豆の契約がどれほど大量に出来ても、年間百万俵不足の現実は避けて通るわけにはいかない。しかも府県産内地小豆が大凶作である。

そして未曾有の結婚ブームと出産ブームで小豆の大量特別需要を見逃がすわけにいかない。

筆者は買い方の苦境もさることながら、天下のすう勢は十月底。十一、十二月上昇、一月天井とみる。一万九千円以下の小豆を嬶質で買っても嬶の流れるはずはない。

これは可能性の問題であるが、もし交易会での契約が予期に反して少なかったり、進展しなければどうなる。もとより二万一千円買い!!と火を噴こう。あり得いな話かもしれないが、あり得ることだ。これが投機である。

編集部注
昭和四六年十月十六日、東京小豆市場先限は寄りと高値が19090円で安値と引けが18710円。この引け値、高値掴みの住人カンダタには、スルスルと天から降りて来た蜘蛛の糸が如し。

同年九月二三日安値、18720円。同月三 十日、翌十月一日は、共に18710円で安値引け。近くにマドもある。 

この前後100円水準が分水嶺。維持されるか否かで後の趨勢が決まる。

【昭和四六年十月十六日小豆三月限大阪二一〇円安/東京二三〇円安】