森を見て木を見ず(日刊版3月13日付)

木を見て森を見ずという諺があるが、今の相場、そして日本を見るには、その逆で行かねばならぬ。

穴を出る蛇を見て居る鴉かな   虚子。

俳句の面白さは、季語にあると思う。

蛇は夏の季語だが穴を出る蛇は春の季語になる。これは啓蟄からの流れで、着眼点の違い。

相場の大局観は、これから新芽吹く春を迎え、そして、草木生い茂る夏へと移り変わる。

日本経済も立ち直ってくる。

二十年以上低迷していた経済も底打ち。立ち直る兆しが出てきた。

経済も相場と同じ、底を打てば、繁栄期を迎え、天井打つまで上昇する。

安部さんの面構えの血色の良さよ。二度も総理大臣を勤めるくらいである。運も良い。

戦後、一度退陣して、再登板した総理大臣は、吉田茂元首相以来、六十四年ぶりという。

丁度、コンドラチェフの経済サイクルが六十年前後。

敗戦のドン底に落ちた日本の復興に力を注いだのは吉田内閣。六十年後、円高と震災や津波、原発事故と、これ以上無い痛手を被った日本。

日本の基幹産業ともいえる大手電機、自動車メーカー、電力会社もドン底に突き落とされた。

そおいえば、昨年NHKで「負けて勝つ」という吉田茂のドラマをやっていた。何かのめぐり合わせであろうか。

目に見えない法則が働いていることを感じずにはいられない。

国内商品や株、ドル円の大局は上昇と見て間違いない。東京金も新値を取ってこよう。

今は一本一本の木を見て張る相場ではない。

森全体を見て、季節を知るべきであろう。