あの頃は、商取業界に元気があった。商品相場に、大衆の人気があったのです。
体の調子がすぐれないのは、寒さに加えて老齢のためで、毎日会社に出てくるだけでくたびれる。
会社であっても、出てくるところがあるだけ、いいではないか。
家の近くのタバコ屋にタバコを買いに出かけたら転んでしまった。
横を通るクルマから人が出てきて、助け起こしてくれた。
家の廊下で、足腰が弱らぬように練習しているのだが、八十を過ぎたらもうアカンのかなと思ってしまう。
今日は、古いなじみの西田昭二さんが、お見えになるそうだ。
西田さんとは、戦友みたいなもので、北海道の小豆の作柄などをよく見に行った。
もう一人、脇田のあーちゃん。阿竹さんとも古いお付き合いだ。
古い友人というものは、宝である。
なにも言わなくても、そこはかとなく友情が伝わる。
もう一人、長崎のまむしの本忠。逢いたいからお金を送ると仰るので、長崎まで出かけた。
みんな、商取業界よき時代の戦友である。
若い時代は、業界で暴れまわったが、いまは寄る年なみ。それぞれ静かにお暮らし。
商取業界が大発展する時の関門勢。なつかしいですね。
下関の取引所まで何回も出かけた。
門司港を渡し船で渡るのがよい。
晩はてっさやてっちり。
次の日は博多に出てきて、馬賊芸者の歓待。
タタミの色が黄色く焼けた西日の入るお座敷で、わいわい騒いでいたものです。