食欲が出てきた

相場のことは、あまり考えない。食べることばかり気がいってしまう。食欲が出てきたのか。
船寄せて見れば柳の散る日かな 太祗。
暑からず、寒からず、いい時期である。
食べるものも、刺身よし、おでんよし、ステーキよしである。
ほうれん草のおひたしもよい。白菜の漬物。板つきの蒲鉾。
ものが美味くなっていく。磯の鮑の片想い。
京都の鰊(にしん)蕎麦。江戸前の笊(ざる)蕎麦。関西のきつねうどん。カマンベールチーズでもよい。
寒くなってくると、薩摩汁。大根を細く切って、厚揚げ、豚肉の薄切り。とん汁ともいう。
味噌でなく、粕汁を好む人もいる。
寒いときは、熱い料理はなにをしてもおいしい。
裏川に柴漬けのある農家かな・川華。
関西の鍋は、水炊きという。京都祗園の水炊きは、汁の色が白く濁っている。鴨の肉に上質のネギ。
すっぽん専門の店もあって、汁がうまい。
湯豆腐に大きく揺れて煮えて来し・晴天。
おでん屋の時計一時をなんなんとす。誓子。
家ですき焼き鍋を囲むときは、団欒(だんらん)であろう。冷えた次の日の朝の、味のしみた豆腐がうまい。
煮えすぎた白葱も、くたくたに煮えたのが味がある。
琵琶湖の鴨も、葱がなければ。葱は、本当は、生ぐらいがよい。
食べることを考えていたら、食べた気になってしまう。
そして、相場のことなど、どこかに置き忘れてしまう。
相場は相場。
置き忘れた相場を取り戻そうとしても、もう、そこにはいない。