昭和の風林史(昭和五八年二月十四日掲載分)

堂々の陣を撃つなかれ?

百も承知の中豆弱気論は脱糞した便をこねまわし、なにを食った糞かの解説者だ。

シカゴは五㌦86の下限抵抗トレンドで止まるやV反発した。今回の18㌣押しで六㌦20㌣まで買う力をつけたと見る。

穀取輸大は買い方利食い先行。押したらまた買うための利食いである。

売り屋も様子を見て前みたいに売ってこない。

期近限月からサヤを詰めてくるのが無気味だ。

取り組みの厚さと、大衆の奥底知れぬパワーが怖い。それと、シカゴの様子が違っている事。

こうなると中国大豆ばかり見て材料こねまわすがための弱気悲観論者は、相場が判らなくなる。

弱気即ち理論家イコールファンダメンタリストかもしれないが、大局の流れ、相場のリズム、大衆の心、商取業界に流れ込んでいる資金の性格。それらを理解せずして理論家もあったものではない。

中豆に関する材料は確かに言われる通りかもしれないが、相場次元でいえば、先刻織り込み済みだ。

理屈はそうであっても、相場はそうはならない。

相場している人は理屈を聞きたいためではなく、銭を儲けるためにきているのだ。そこのところが判らず、中豆の弱材料をいつまでも鬼の首取ったみたいに、ふりまわしているのは、肝心要の相場とはなんであるかを知らないからだろう。

目先押すもよし、押さずもよし。四千円台の踊り場づくりだ。

このようにしていて抜けば玉散るストップ高が今週あたりくるような気配。

道は六百八十里。先限四千六百円。そのあたりまず考えておけばよい。

小豆は相手にするな、ほっておけ。売り玉踏まず、煎れず、暫く放置。

●編集部註
 実際に接した人であればご理解いただけるが、風林火山こと鏑木繁は、本来理性と知性の豊かな読書人かつ教養人である。
 そおいう人が悪口雑言モードに入ると鬼神と化し言葉はカミソリとなる。激怒した商品会社から不買運動を起こされても平気の平左であったという。
 評伝や関係者の証言を総合すると星新一や斎藤茂吉、森鴎外等がこの手の御仁であった。知のヒクソン・グレイシー達だ。
 ところで、40代以上の読者なら今回の記事を読んである小説を思い浮かべるのではないだろうか。
 筒井康隆が1966年に発表した『最高級有機肥料』という、饒舌にして美食家気質の宇宙人達との交流を描いた作品だ。
 この頃の尖った作品を知る身としては、和服に身を包み、老文豪然としている今の姿は、世を忍ぶ仮の姿にしか見えない。