昭和の風林史(昭和四六年八月二十一日掲載分)

爆発狂騰必死 目標一万八千円

小豆相場は高値更新から一気に爆走するだろう。目標一万七千八百円。大々的な踏み上げへ。

「ほの赤く掘り起しけり薩摩芋 鬼城」

証券市場も商品市場もかつて経験したことのない嵐に、ただなすすべを知らなかった。

しかし、そういう一連の激動から、まったく関係のないような存在の中で小豆相場は、違う次元の材料で高騰した。

産地の意外なほどの不順な天候。そして主力買い方の信念ある方針。また安値を売り込んだ反動。

相場は再び風雲急を告げる。

旧穀前二本は完全に買い方の理性ある管理相場となっている。七千円台を付けようと思えば、いつでも好きな時に付けられるという自信。それだけに近寄る人はいない。

新穀参謀はそれぞれ一代の高値に挑戦して、早くも霜一発を待つ姿。売り方もようやく事の(天候の)意外さに気がつきだした。しかしその売り値は低く、ここで高値更新となれば大々的な踏み上げは必至の様相である。

時に山大、山梨両社は、霜一発で(新穀の)高値更新は、勢いに乗って買い進む姿勢である。

今までは踏み上げに向かって、この両社は良識の名において買い玉を利食いしてきた。

しかし、事ここまできて決定的な凶作現象が判然とすれば、下限なしと見て売り方が踏み終わるまで、厳然たる姿勢を崩さぬ気構えであった。

相場は16日(月曜)の叩き込みを、底にして低温を背景にタイミングよい買い方の作戦まさに図に当たり急騰したが、結局は新値抜けから月末にかけての爆走ということになりそう。

筆者は、ここで再び強気方針に転換。

目標値段を一万七千八百円に置く。

早霜は今や可能性の問題ではなく、時間的な問題となった。あるいは九月上旬にでも凍結の現実が穀物市場を襲うかもしれない。

また、立ち枯れ病の進行も楽観出来ぬ状況下にあり、再び小豆相場は割れるが如き、白熱狂騰の危機に直面することであろう。

買い方針である。

●編集部注
「風林火山」の語句通り。見よ、この“速きこと風”の如き敏捷性。

少なくとも二十日までの値位置水準で、強気転換するには、分析力よりも胆力と決断力が必要。

こういう時、往々にして人は、過去の相場の動きや己の勝利経験に拘泥して行動が遅れる。

罫線を広げ「一万六千円超えで買い」と見ても、いざそうなった時に動けるか否か。また去来する煩悩に振り回される…。

【昭和四六年八月二十日小豆一月限大阪二七〇円高/東京二一〇円高】