5月12日付 メリマンコラム 《長期見通し》 その3
彼の返答は続く。
『一方米国人はどうだ。何故あなた方とその約束を我々が信頼しなければならない? あなた方の約束でイラクはどうなった? アフガニスタンは? シリア反政府軍についての譲れない一線はどうなったのだ? あなた方が約束し、その後反故にしたポーランドのミサイル防衛網についてはどうなのだ? この、ウクライナ問題についての懸念とやらは、実は将来の原油輸出など、米国自体の市場取引拡大と米国民の利益に対する飽くことを知らない貪欲さが全てなのではないか? いったい何をもって、近隣に在り信頼に足る経済的パートナーであり続けたロシアを差し置いて、あなた方を信用した方が良いと言うのだ?』
さぁ、私にはわからなかった。私はそれを認めた。
『しかし、あなた方は本当に、ロシアとプーチンの方が米国とオバマより信頼に足ると信じているのか? もしかしたらNATO諸国が集まり、これが新たなロシアの拡大政策の胎動だった場合に備えて互いをどう護り合うかを議論するのは良い考えだろうとは思わないのか? つまり、例えばバルチック諸国とポーランドはそんな事が起きた時に自らを防衛出来ると思うのか? どうするつもりなんだ?』
『我々はプーチンとロシアがそこまで手を伸ばし、NATOに対してリスクを取ることは無いと信じている』。
彼らは説明した。
『我々はむしろ、米国が抱えている、自らの影響力と市場を我々の犠牲の上に拡大していきたいという衝動や、我々の暮らしに干渉し影響を与えたいという欲望について憂慮しているのだ。確かに、そういった会議を開き、互いをどう護り防衛していくかについて論じるのはNATOにとって悪くはないかもしれない。しかし、だ。もしNATOが関連する国境に軍隊を招集し防衛的訓練を始めれば、それが一般の人々の不安を呼び起こし、我々が第三次世界大戦の口火を切ろうとしているのではないかと疑ってパニックさえ起きるかもしれない。我々はパニックをもたらしたくない。何故ならそれは世界経済にとって深刻な不況に繋がる怖れがあるからだ』。
『あぁ…』私は思った。信頼は去ってしまった。
『しかし、あなた方にはすでにオバマ大統領に対する信頼も尊敬も無いというのか?』
『無いね。NSAの一件とドローン(無人航空機)攻撃以降はね。彼はドローンが大好きで、我々はドローンが大嫌いだ。あなた方の政府によるスパイ行為も憎んでいる。そんな行為を支持しているあなた方の大統領は、我々が当初思っていたような偉大な人物ではない』。
あぁ、何ということだ。これはまずい。信頼どころか愛も去ってしまった。5年の間、私達のヨーロッパにおけるイメージを信じ続けた結果、それはすでに変わっていた ―いや、大いに進展していた―それは大統領の2期目が始まって以降のことだ。
私は突然理解した。世界は変わり、再び戻ったのだ。その場に居た中の一人が私に思い出させてくれた。
オバマの最初の就任式当時、ヨーロッパ中がこぞってオバマに魅了されていた。この時、私は就任式のイベントチャートを見て、これが世界中の人々にとって失望と幻滅に終わる可能性を示唆していることを予測したのだった。
ヨーロッパ人達はその予測を出した当時、決してハッピーな状況ではなかった。彼らはオバマと彼に備わった雄弁な訴求力を愛した。しかし今や、全てが変わってしまったのだ。
だがそうだとしても、たった過去数カ月でのこの突然の変わりようは、私を驚かせた。天王星・冥王星スクエアは、結局のところ、私自身の出生図の海王星―幻滅の惑星にT字スクエアを形成していたのだ。私は、殆どの米国人が天王星・冥王星スクエアの下で起きた―起きている―この変化を見過ごしていると思う。
私はロシア人とおそらくはヨーロッパ人も、彼ら自身のメディアが創り出す魔術に乗せられており、米国人はそうでもないと考えていた。
だがこの米国において、私達もまた例外ではなかった。 魚座の海王星がもたらす幻滅について話すのだ。天王星・冥王星スクエアがもたらす覚醒について話せ!
今、私達が最も話さねばならないことは、自分達のリーダーへの信頼という原点に回帰し、米国自身を含む世界全体の、地球規模の癒やしを取り戻すことだ。
私は2008年の大統領選当時、それこそが希望 ―“約束されしこと”―だと考えていた。そして私達は進歩したと思っていた。しかしながら、ドイツの知識人達や企業家、金融界幹部達との私の経験がもしも何かの暗示であるとするならば、私達はまさにその原点に再び振り戻されたことになる。