6月16日付 メリマンコラム 《長期見通し》 その4
私の意見では、HFTは一般投資家に影響を及ぼさない。影響を受けるのは大口投資家、超大口投資家、そして同じ土壌で勝負する他のHFTトレーダー達、または “*ダークプール取引” を行う者達だ。彼らは互いにナノ秒単位の優位性をめぐって闘い、結果として勝った者は誰であれ、まさに何百万ドル、何十億ドルという莫大な利益を獲得する。だがもし彼らがたった一回の大口取引にミスをすれば、同じように莫大な損失を出すのだ。そうだ。確かにルイスが主張するように、彼らは “**フロントランニング” の罪を犯している。そしてそれが技術的にもモラルの点でも不適切で、是正されるべきだというのもその通りだ。
*ダークプール取引:金融商品取引所を通さず、投資家の売買注文を証券会社が付け合わせる取引のこと。取引所外取引のひとつ。取引参加者が匿名で価格や注文量などの取引内容が 外部から見えにくいことから「Dark Pool(見えない流動性)」の呼び名が付いた。主な参加者は外資系の機関投資家。(野村證券/証券用語解説より)
**フロントランニング:金融商品取引業者が顧客から有価証券の売買の委託等を受けた場合、その売買を成立させる前に、自己の計算において同一銘柄の売買を成立させることを目的として、顧客の注文より有利な価格(同一価格を含む)で有価証券の売買を行うこと。(東証/証券用語解説より)
だが、投資家としての私達がはたしてそれによって損失を被るのか? いや、私はそうは思わない。おそらく1セントの1/1000ほどの約定額の差があなたにとって問題だとするなら話は別だが。その代わりに今や私達が何千、何万もの株を購入する際にかかる手数料率は7ドルにも満たない。昔なら今と同等の注文が約定した時は、何百ドルもの手数料を払うことになったろう。
最速の約定を競うデジタル・レースが金融界に入って来てからというもの、投資家にとってはトレード・オフ(得失評価)の考え方が非常に有効に働いてきたと私は思う。これは昨今、各国が自国通貨を最も安値にしようと競っているのと殆ど同様の状況だ。多くの利益を得られはするが、ひとたび異常やミスが発生すれば、怖ろしく厳しい結果となる。しかし、それが天王星・冥王星スクエア(2012年〜2015年)のもたらす本質ではないのか? カーディナル・クライマックスと “艱難の7年”(2008〜2015年:聖書の用語から)をこれに加えるなら、なおさらだ。
確かにゲームは不正操作されているかもしれない。だが、今日の投資家達(それに中間所得層、自宅所有者、そして実体経済を担う市井の人々/Mr. Main Street)は、HFTトレーダー達の行為よりも、中央銀行や各国政府による持続的な市場介入と相場操縦によってこそ、なお一層苦しめられていると私は信じている。